ゲイツ氏の精神と日本の心
2010.02.12
マイクロソフト社の創設者であり、ソフトウェア界における技術革新をリードしてきたビル・ゲイツ氏が、53歳という若さで経営の第一線を退き、
「ビルとメリンダ(夫人の名前)ゲイツ財団」の活動に主軸を移した。当財団は、個人資産のほとんどすべてにあたる5兆円を投じて、
2000年に設立された世界最大規模の慈善財団である。
2008年11月、五井平和賞(1999年に五井平和財団が創設)の授賞式と受賞記念講演のために来日したゲイツ氏は、
財団の目的や活動について次のように語った。
2007年には1億3000万人の子供が誕生したが、そのうち1000万人が亡くなっている。そのほとんどは、世界の貧しい国の恵まれない子供たちだ。
この子供たちも、恵まれた国の子供たちも「すべての命は平等の価値を持つ」という根本理念に基づいて財団は設立された。
そして、財団の目標は、子供の死亡をゼロにすることである。そのカギを握るのはイノベーションであり、新しい方法で病気の診断、治療、予防を行い、
人々の命を救うことである。
そのために、ゲイツ財団は「大いなる挑戦と探求」という推進事業を始めている。その中では、いまだ検証されていないが大変魅力的な理論に
賭けようとしている。
ゲイツ財団は政府、NGO(非政府組織)など多くのパートナーと協力しながら様々な問題解決に向けて共に働いている。
例えば、2000年にエイズ、結核、マラリア撲滅のためのグローバルファンド(基金)の創設に寄与した。このファンドは、世界の保健医療のための
資金を提供する上で画期的なイノベーションであり、すでにマラリア治療における世界最大の資金源となっている。
「イノベーション」とは
さらに、最も貧しい人々を助けるために、大きな成功を収めた人々や企業に、専門知識や資源を提供してもらうよう働きかけている。
健全たる経済や平等な世界を築くための唯一の長期戦略は、より多くの相互協力とイノベーションの組み合わせであり、それこそ、平和への道である。
それぞれが、それぞれの役割を果たしたならば、世界はどんどん良くなっていく、と記念講演を締めくくった。
ゲイツ氏の講演やその後のトークセッションを聞き強く感じたことは、一見相反するように見えるITビジネスと慈善事業を、明確なビジョンと希望を持ち、
しかも楽しみながらやっているということである。その根底には「他を助けることは、人間の本性だからだ」という哲学がある。
そして、慈善事業の成功のために、政府高官をはじめ貧しい多くの人々と直接会い、世界各地を駆け回っている。今回の来日も、ゲイツ氏は家族と共に
自家用ジェット機で来て、授賞式などを済ませた後、日本で一泊もせずに帰国している。
21世紀への大きな夢を
世界が大不況に入ったこれからの日本の役割について考えてみた。
日本は世界第二の経済大国であり、2008年には4人のノーベル章受賞者を出せるようになった科学や技術の底力をもっている。あと10年もたつと、
希望すれば自分のすべての遺伝子情報が10万円くらいで数分のうちにわかる時代が来るのも夢ではない。
しかし、研究や技術の進歩よりはるかにすごいことがある。それは、万巻の書物に匹敵する遺伝情報を極微の空間に書き込み、1分1秒の休みもなく、
正確に解読している大自然の不思議である。
この大自然の偉大な働き(サムシング・グレート)に感謝して、日本人は古来より「お陰様」「有り難い」「もったいない」「いただきます」という言葉で
表現してきた。これらの言葉は、外国語では簡単な単語に翻訳することは不可能である。
このように、大自然の恵みを実感し、それに対して感謝を捧げてきた日本人が、経済力と科学技術力を、いま手にしている。
日本人自身がまず、金や物などに重きを置く現在の価値観を見直し、目に見えないもの、心、命、魂、サムシング・グレートなどに対する
価値観を取り戻すことが必要である。それには、そのための教育が最も大切である。